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東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

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東京タワー オカンとボクと、時々、オトン


監督:松岡錠司
脚本:松尾スズキ
出演:オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、小林薫
配給:松竹

松尾スズキの脚本は原作の魅力を全て伝え切れているとはいえないが、松岡錠司の演出は的確で、過度に湿っぽくなることもなく良質なドラマに仕上がっている。ただ、その松岡の演出もボクの少年時代の描写では腕が鈍る。現代のボクが記憶を遡って想い出を切り取ったというスタンスのもと、漫画ちっくな画が立て続けに登場する。イラストレーターとして活躍するボクが振り返る子供時代なのだからそれもアリなのかもしれないが、映画全体を通してみるとうまく機能しているとは言い難い(早い話が面白くない)。松岡の演出がキレを増すのは、ボクではなくオカンを対象にしたとき。鏡台の前で口紅をひき束の間の女の顔を見せるオカン。抗がん剤治療で苦しみぬくオカン。被写体のオカンが狙い済ました構図によって捉えられたとき、息をのむほどに“人間”としてのオカンが息づいている。

東京タワーを見上げる病室で闘病生活を送るオカンの描写と過去の回想が入り混じる構成はドラマの盛り上げを微妙に妨げる。主演のオダギリを映画冒頭から登場させるための苦肉の策と見えてしまう。また、この映画で致命的なのは数々のミスキャスト。特に若きオカンを演じる内田也哉子は健闘してはいるものの、母としての芯の強さを表現するには若すぎる。実母である樹木希林と比べると大きく見劣りしてしまう。顔は似ていても中身はまるで違う人間に見える。それからボクの中高生時代を演じた冨浦智嗣。声変わりもしていない、いかにも繊細そうな彼が自堕落に生きたボクを演じるのは違和感たっぷり。「1年後」のナレーションとともに無精ひげの汚いオダギリに成長するシーンはあまりの変貌に失笑してしまった。人間を描く作品だけに、この2人のミスキャストはとても残念。

松尾の脚本は全体的に原作にある毒が意識的に薄められているが、抽出したエピソードを見る限り、本当は松尾自身もっと毒を生かしたかったという意図は見て取れる。おそらく製作サイドからの要望で表現をソフトにせざるを得なかったのではないか。映画なんだからテレビで出来なかったことをもっとやればよかったと思うが、興行重視の一本だけに限界があったようだ。

いろいろ残念な部分はあるが、松岡の演出のおかげで感動的な作品に仕上がった。特にオカンが下ネタを連発する息子のラジオ番組を楽しみに聴くシーンには胸が締め付けられた。大衆向けにソフトな作りになっているとはいえ、原作へのリスペクトが感じられる後味のよい作品だ。


日時: 2007年4月15日 11:08 | コメント (0) | トラックバック (0)




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